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二次創作小説置き場
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No.17
ジュヴナイル|魔人学園剣風帖
2025.12.10 No.17
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節分☆ラブバトル
節分。日本の伝統行事の中で、知られている割には案外とマイナーな気もするこの行事。昨今では3日の夕方、豆をまいたり、お決まりの台詞をご近所から聞くことも少なくなった。
真神学園においても、ここ数年は何もなく過ぎていたこの日であるが―――しかし、今年は違った。何故なら、一人ばかり、やる気満々になっている生徒がいたためである。
「さぁ、やるぞ!」
陣頭指揮をとるのは、頭には自作らしい鬼のお面。恐らく鬼のお面。多分、鬼のお面。きっと鬼のお面。……だろうと思われる物(それくらいに出来は微妙だ)を被った緋勇龍麻だ。陣頭指揮というか、やる気になってるのは一人だけであり、恐らく発案・実行も一人なのだろうから指揮とも呼べないのであるが、それはそれとして持ち前の強引さだけで豆の入った枡を蓬莱寺京一に押し付け、意気揚々と緋勇龍麻は語りだす。
「京一、鬼退治に明け暮れた一年の厄を払うためにも、ここは気合いを入れて豆まきをするべきだと思わないか? 思うよな? そんなわけで、俺とお前の二人の愛の豆まきタイムだ。鬼は俺がやるから、お前は豆を撒いてくれ」
強引に押し付けられた豆入りの枡を見つめ、京一は念のためにと問い返した。別段、この突飛な申し入れにツッコミを入れたり天誅を下したりするつもりはないらしい。
「お前が鬼やんのかよ?」
「ああ。何しろ『愛☆』の豆まきだからな!」
性懲りもなくアホな物言いをする龍麻にも、京一は怒るそぶりも呆れるそぶりも見せなかった。
「ッし。ならいいぜ」
それどころか、アッサリと了承したのである。朗らかな笑顔と共に。
「やってくれるか、京一。さすが俺の相棒にして最愛の男!」
龍麻も京一の肩を叩きながら感動してみせた。
緋勇龍麻がアホなことを言いだしたにしては、珍しく和やかな光景である。
「じゃーよ。俺が10数えッから、その間に逃げろよ」
京一はワクワクとした様子で枡に入った豆を弄びながら言った。
「わかった。じゃ、10秒後にな」
龍麻もにこやかに答えると、ひらりと手を振ってご機嫌な様子で教室を出ていく。頭には、鬼のお面(推定)を被ったままで。
道行く者は今更、緋勇龍麻の奇行ひとつで驚いたりはしない。せいぜい「ああ、節分だしな」とか「妙に行事に律義よね」とか、的を得ているのか得ていないのか微妙な感想を抱くのみだ。
一方、教室に残った京一はと言うと―――
逆に、クラスメートを恐怖に陥れていた。
「クックックックック……。俺に豆渡して自分が鬼たァ、甘ェぜひーちゃんッ。見てろよ。キッチリ退治してやるぜッ!!」
枡を片手に、もう片手に豆を握り締めてニタ~リと笑う蓬莱寺京一は、まさしく鬼のようであったとクラスメートは後に述懐する。
かくして、真神学園の節分は二名限定で開始されたわけで。
数分後、豆まきとも思えぬスピードで投げられる豆をくらいながら、必死に豆から逃げ回る緋勇龍麻の姿が至るところで確認されたとか。
「きょ、京一……! ちょっとコレは豆まきの威力と違……っ!」
「聞こえねェなァ~?よっしゃ、もいっちょ行くぜッ。鬼は~外ッ、鬼は~外ッ、福は~内ィ~!」
鍛え上げた筋力で投げられる豆は、侮れない威力がある。なまじ粒が細かいだけ威力が集中するのか、当った時の痛みは大きい。食らう方は、パチンコか何かで攻撃されている気分だ。
逃げる龍麻、追う京一。
いつもと逆の珍しい風景に、生徒達は一瞬だけ驚くものの―――二人の様子を見て、すぐに皆、生暖かい笑みを浮かべる。
「ワハハハッ、神速の豆まきを食らいやがれッ!」
「ちょ、マジで痛いって京一!」
「鬼はー外ォ~ッ!!」
「ぎぃやぁ~~~~!!」
弾丸の如き豆の飛礫を受けて悲鳴を上げる緋勇龍麻は、それでも京一に追いかけてもらえて、幸せそうだったので。そして珍しいことに、追う京一の方も、なんだか楽しそうであったので。
「元気だよねェ、二人とも」
「うふふ。楽しそうでいいわね」
今日も真神学園は、それなりに平和だった―――。
爆走☆夢芝居
パン、パン、と柏手を打つ音が響く。
日付が変わったばかりの時刻。普段ならばこんな時間の神社に、人気などはない。しかし今日は一月一日、元旦である。その午前零時となれば、いつになく神社は賑わいを見せている。
境内からこの賽銭箱の前にくるまで、十分程は待っただろうか。龍麻と京一も、ようやく回ってきた自分達の番に溜め息ともつかない息をついて、賽銭を投げ込んだのだった。
二人、神妙に手を合わせて目を閉じ、祈る。
新しい年への希望を。
後ろがつかえているため、そう長く祈るわけにもいかない。二人は頃合いを見計らって顔をあげると、人並みに押されるようにして、その場所を次の人達へと譲り、離れる。
そうして、ようやく人込みから抜けると、二人は顔を見合わせて苦笑した。
「すげェ人だな」
「あぁ。ここまでとはな。東京を甘く見てた」
「ハハッ。ま、いー経験になったんじゃね?」
「まぁな」
参拝客目当てに出ている出店をひやかしながら、少しずつ二人は人込みから遠ざかっていく。ひやかすだけのつもりが、いつの間にか京一の手には味噌田楽やら甘酒やらが乗っていたりしたが。
「へへッ。やっぱ、これがなきゃ、夜中に初詣なんか出来ねェよなッ」
何の為に初詣に来ているのか疑問に思える台詞だが、龍麻はさして気にした風でもなく、そんな京一へ向ける視線はどこまでも温かく、穏やかだ。
「俺も、子供の頃はコレが楽しみだったよ」
たまには俺の奢りだと京一から受け取った甘酒を、少し上げて示しながら微笑う。
すると京一も同じように「そーだろ?」と嬉しそうに微笑い返してきた。
そうしながら、流石に両手に出店の食べ物を持った状態で街を歩くわけにも行かず、境内の端の人がまばらな場所へと移動する。
同じように、手に出店の品を持ちながら楽しげに話しているグループや恋人たちが幾組か見られた。
人波の邪魔にならぬ場所へ陣取った二人は、早速とばかり、戦利品へと口をつける。
「か~ッ、うめェ~!」
味噌田楽をひと息に半分ほど食べた京一の第一声がコレだ。龍麻も、思ったより上等だった甘酒の味に感心はしていたが、大げさな京一の様子に苦笑を誘われた様子。
「良かったな」
「おうッ」
けれどその苦笑も、からかうようなものではない。それが分かっているのか、京一も素直に頷いて続きを食べにかかる。
龍麻は、味噌田楽を味わうことに集中しているらしい京一の邪魔をしないように、ひっそりとその様子を眺めることに決めた。
本当に美味そうに、顔を笑み崩れさせて食べる京一は、龍麻の目にはとても可愛らしく見える。愛しげに目を細め、心ゆくまで京一の幸せそうな顔を堪能した龍麻は、京一以上に幸せな気分に浸った。
仲間達とは、既に初詣の約束をしてあったが、それに抜け駆けして二人で夜中の内に行こう。と言って誘ってきたのは、驚いたことに京一の方だった。だが、京一に誘われて龍麻に否やがあるわけもなく、こうして日付が変わる頃合いに合わせて初詣へとやってきたのである。
空気はしんしんと冷えて、時折吹く風は身を切るように冷たかったが、そんなことは何でもなかった。京一と二人で迎える新年。そして初詣。その幸福な事実の前には、寒さなどなんでもない。
隣を歩く京一を見るだけで。こうして幸せそうな京一を見ているだけで、温かくなる心。それはどんな物にも代えがたい温かさだ。
先ほど、手を合わせて祈ったのも、そのことだった。
この、温かさを。隣に在る存在を、失いませんように。ずっと、京一と共に在れますように。
それ以上の願いなど、あるわけもない。
神などアテにはしていない。きっと京一も同じことを言うだろう。けれど、何かに願わずにはいられなかった。その、思いを込めて祈った。
きっと、叶えてみせる。
何かの力でなく、自分の力で。
その決意も本当で。きっとあれは願いで。―――そして、同時に誓い。決して傍を離れまいという。
「ひーちゃんも、味噌田楽、食いたかったのか?」
じっと見つめる龍麻の視線に気づいたのか、京一が問い掛けてきた。しかし、視線を皿へと落として既になうなっているのに気づき、済まなそうな顔になる。
「わりィ。全部食っちまった」
「いや、美味そうに食うな、と思って見てただけだから。気にすんなよ」
くしゃりとその髪を撫でれば、京一は僅かばかりに口を尖らせて不満の意を示した。きっと、龍麻が遠慮したことと―――子宥めるような仕草に、不満を覚えたのだろう。
「なら、いいけどよッ」
納得したとは言いがたい顔で、空になった甘酒の紙コップの端をガジガジと行儀悪く噛みながら顔を背けた。
けれど、本気で拗ねているわけではあるまい。恐らく照れ隠しも入っていることを、龍麻は分かっている。
「ほんとに、気にするな。―――ただ、な。お前がさっき、何て願いごとしてたのかって考えてた」
誤魔化そうとしたわけでもないが、それを考えていたことも事実だ。自分が、京一と共に居ることを望み、祈り、願い、誓った、あの時に。いつも神など信じていないと言う京一が、いつになく真剣な顔で手を合わせていたのも、知っていたので。京一があの時、願ったことはなんだったのか。気にならないわけがない。
「俺?」
背けていた顔を戻した京一の目は、意外そうに丸められている。
「ああ」
龍麻が小さく頷いてみせると、京一は考える顔になり―――そして逆に、問い返してきた。
「そういうひーちゃんは、何て願いごとしたんだよ?」
予想していたので、龍麻はアッサリと答える。隠すほどのことでもない。それに、この望みを知っていて欲しいという思いもあった。
「俺は―――お前と、ずっと一緒に居れますように、かな」
微笑と共に答えれば、夜目にも京一の顔が僅かに赤く染まったのがわかる。
「……は、恥ずかしいヤツだなッ」
「そうか?」
龍麻としては、本気で思っているのだから、恥ずかしいという思いはない。むしろ、誇らしくすらあるのだ。京一へ向ける思いは。
まったく悪びれることも恥じることもない龍麻に、逆に聞かされた京一の方が照れてしまったようで、二の句が告げずにいる様子。
「あぁもう、勝手に言ってろッ」
突き放すようにそんなことを言っても、表情が裏切っていることを、恐らく京一も分かっているのだろう。けれど龍麻は、それには気づかないふりで。けれど、容赦もせずに再び問いかける。
「京一は?」
じろり、と恨みがましい目で睨まれるが、それで怯むような龍麻でもない。どこか拗ねたような、そんな睨み方をされては、怯むどころか舞い上がるだけであることを、果たして京一は分かっているのだろうか。
「…………」
にっこりと微笑んだ龍麻が、答えを聞かずには済ましてくれそうもないことを悟ったのか、京一はまたフイと顔を背けて、投げやりに言った。
「~~~俺もッ、似たようなモンだよッ」
その言葉が、龍麻の顔を緩ませるだけだと分かっていたのか、言うなり背を向けて歩き出してしまう。
「帰るぞ、ひーちゃんッ」
数歩遅れて、足音荒く歩き出した京一の後を追いながら、龍麻は浮かんでくる笑みを止められずにいた。
なんとも、幸せそうな、その笑みを――――。
「――――っていう、初夢を見た」
話を聞いている間中、小蒔はこめかみを押さえ、醍醐は開いた口が塞がらず(きっと出せるものなら、砂も吐いていただろう)、美里は僅かに頬を染めて「まぁ、素敵」と呟いていた。
そして、夢に出された当事者の一、蓬莱寺京一はと言えば―――
「勝手に気色悪ィ夢見てんじゃねェエエエエエッ!!!」
当然、鳥肌をたてて、いつものように叫んで大抗議である。
が、いつもと違うところがたった一つ。
それは、緋勇龍麻の様子である。
緋勇龍麻はグッと拳を握り締めて、話が終わるなり、男泣きしかねない勢いで、叫んだのだった。
「なんでお前がそんな夢を見るんだ鈴木ぃいいいいいい!!!!!!!」
怒髪天の蓬莱寺京一さえも怯む勢いは、凄まじいものがある。
「いや、そんなこと言われても」
そんな初夢を見てしまった張本人・緋勇龍麻らのクラスメートは、思わぬ事態にたじろいだ。
蓬莱寺京一に怒られ、ボコボコにされることはあっても、緋勇龍麻には常に喜ばれていた彼だ。この初夢の話も、良かれと思って話したのだが―――どうやら、逆効果だったらしい。
「俺は、俺は京一と二人っきりで年を越すことも叶わず! 京一との初夢すら見れず! 無念の正月を送っていたというのに、貴様はそんな羨ましい夢を見ていただと!? 許せん!!!!」
遂には、緋勇龍麻が怒りのあまりに、そのクラスメートの胸ぐら掴んで揺さぶる始末である。
「まぁ、落ち着け緋勇! いいじゃないか。初夢は正夢って話だし。きっとお前もこの夢のような正月が☆」
胸ぐら掴まれた状態で、喋りにくさもなんのその、よどみなく言ってのけたクラスメートだったのだが―――なにしろ彼は、火に油を注ぐことにかけては、天下一品の男だ。
「鈴木」
緋勇龍麻は、胸ぐら掴んだ手は外さなかったものの、揺さぶることはやめて、奇妙なほど静かな―――けれど、恐ろしい程に低い声で、クラスメートの名を読ぶ。
「なんだ?」
迫り来る危機を理解していないのか、それともむしろ望んでいるのか。緊張感なく答えるクラスメートに、周りに居た者達の方が危険を覚えて距離をとった。
「――――ここは、何処だ?」
「教室」
「そう。真神学園、三年C組の教室だ。ってことは」
「ってことは?」
「学校が、始まってるな?」
「そりゃそうさ。さっき始業式やっただろ。緋勇、ボケるには早いぜ!」
「――――ならば、正月が終わっていることも理解しろぉおおおおおおっ!!!!!!」
真神学園は、年明け早々の大地震の傷がさめやらぬ内に、黄龍の器の暴走によってまた傷を負ったとか。
そして校舎をまたも半壊させた失意の黄龍の器は、未だにクラスメートの夢に未練があるようで、
「何故だ。そんな夢なら何故せめて俺に見せてくれない!?」
と、世の理不尽を嘆いているという。
また、珍しく出番の無かった蓬莱寺京一は――――
「京一、鬱陶しいからさ。もう、ひーちゃんと初詣でもなんでも行ってあげなよ」
「そうよ。別に時期なんて気にしないわ、龍麻なら」
「ああ。今からでもいいから、行ってやれ」
龍麻の様子を哀れんだ友人達から、こんな攻勢を受けていた。
「なんで俺がッ!」
初詣は既に仲間達と行っているわけで、今から行っても初詣にはならないのだが。
こちらはこちらで、世の理不尽を嘆くハメになっているらしい。
しかし、流石にこの三人どころか、クラス中や他学年の生徒―――さらには犬神にまで「どうにかしろ」と言われてしまえば、京一にこれ以上の逃げ道などある筈もない。
仕方なく、延々とブツブツ言って沈んでいる(これでも東京の平和は守ったらしい)黄龍の器に、時期外れの初詣の話を持ちかけることになるのだった。
「そうだぞ、蓬莱寺。お前がいれば、緋勇はどこでもパラダイスなんだからな!」
また余計な一言を吐いた諸悪の根源には、容赦なく天地無双をかましてから。
こうして、真神学園の三学期始業式は、最終奥義のバーゲンセールにて、盛大に幕を閉じたのだった―――。
秘密の花園
ポン、とひとつ。
手の平に乗せられたものを見て、俺は首を傾げる。
「なんだ、これ?」
鈍い銀色した、小さなもの。それは、どっからどう見ても鍵だった。
しかし、何故そんなものを唐突に手渡されたのかが、さっぱりわからない。
大体、何の鍵なんだコレは。
「フッフッフッフッフ。よくぞ聞いてくれた! そう、それは《秘密の花園》への鍵だ!」
人さし指をズビシと掲げ、相変わらずの様子で龍麻が叫ぶ。
「はァ?」
秘密の花園ォ~~ッ?
……うさんくせェ。この上なく、うさんくせェ。
イヤなモン、持つみてェにつまみあげて、目の前にソレをかざしてみるけれども、別に《秘密の花園》の鍵らしくゴテゴテしてたりはしない、普通の鍵だ。持つとこにメーカー名も入ってるし、鍵そのものは、胡散臭いものではないのだが。
「遠慮なく受け取れ、京一。俺の愛だ」
その愛ってヤツがな、激烈にうさんくさいんだよな、お前の場合。
いきなりキリッと真顔になって言ってもなァ……。秘密の花園の鍵とか言われてもワケわかんねェし。
そんな龍麻に半眼を向けた後で、もう一度鍵をよく見直してみる。
―――ホントに、なんてことねェ普通の鍵なんだよな。
思って、何気なく裏側を向けた途端、俺の動きは一瞬止まった。
「……おい、ひーちゃん。コレ、どこの鍵だって?」
「俺とお前の秘密の花園」
…………。
なァ、俺さ。今更かもしんねェけど、お前の脳構造疑っていいか?
とっくのとうに疑ってるけどな。むしろ確信してるけどな。
お前、ぜってー頭おかしいだろ。
「つーかコレ。お前ン家の鍵だろ……」
裏っ返した鍵の持ち手部分には、油性マジックでめいっぱいに《ひゆう》の文字。そのまんま、平仮名で。
「違う、秘密の花園だ……!」
なんでソレにこだわるんだお前は。
「花園はともかく……」
俺は頭を抱えたいのを堪えて、代わりに大きくひとつ溜め息をつくと、自己主張激しい鍵を手の平に握って。
「くれるッてんなら、有り難く貰っとくぜ」
それを、制服のポケットへとしまう。
そうしたら案の定、こっちに抱きつこうとしてきた龍麻の顔を手の平で押し返してそれは防いで。ニヤリと笑って言ってやった。
「そんかし、冷蔵庫の中身は保証しねェぜ?」
―――なんて言っても、相手は何しろ、ひーちゃんだからな。
「そんなもの。俺とお前のめくるめく愛のためならば……!」
また、わけわかんねェこと言って、全然堪えちゃいなかった。
ある意味すげェよ、お前……。
懲りずに抱きつこうとしてきた鬱陶しい龍麻を朧残月で振り払って、先に悠々と帰途についた俺の顔が、鍵の入ったポケットに手ェ当てたまま、なんとなく緩んでしまってたのは。秘密の花園とか言う龍麻がおかしかったからだ。―――ってことに、しておこう。
畳む
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